多くのメディアなどでも取り上げられ、需要が高まっている退職代行サービス。自分で退職を言い出せない環境で働く若者たちの間で人気を集め、近年サービスを利用する人は増えています。
退職代行サービスを利用して会社を辞めると「有給は消化できるのか?」という疑問が多く寄せられています。この記事では、退職代行で有給は消化できることや、失敗しないサービス選びのポイントについてお話ししていきたいと思います。
有給は“給料が発生する労働が免除された日”です。この記事を読んで、退職代行サービスを使った有給の消化方法を知り、損することなく退職を行いましょう!

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退職代行を利用しても有給は使える!
結論からお話しすると、退職代行サービスを利用して仕事を辞めても有給の消化はできます。なぜなら、そもそも「有給休暇」というのは、労働基準法によってある一定の条件を満たした従業員に対して与えられる休暇であるからです。条件は後で詳しくお話ししますが、アルバイトでも有給休暇が付与されることもあります。
有給休暇とは、正式には「年次有給休暇」と言い、賃金が支払われる休暇日のことを指します。
引用元:(エン転職/人事のミカタQ&Aより)
有給休暇は賃金が支払われる休暇日なので、その期間分は働かなくても賃金が発生します。そのため、退職するなら有給休暇を消化してから退職したほうが良いというのはお分かりいただけるのではないでしょうか。
退職代行サービスを利用した際の有給休暇の消化のタイミングや、気を付けたいポイントについて詳しくお話しします。
退職日までの期間を有給消化に当てる
一般的に「引継ぎ完了後、退職日までの期間」に有給を消化します。有給を使い終わったら退職という流れにし、会社の勤怠締め日を退職日にするなど、逆算してスケジュールを調整することが多いです。
退職代行の利用を検討している方の中には、「なかなか会社が退職を認めてくれない」や「上司に退職を言い出せる関係性ではない」というお悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか。
民法第627条では、期間の定めのない雇用契約について次のように定められています。
期間の定めのない雇用契約については、雇用契約解約の申し入れから2週間で終了する。これは会社の同意がなければ退職できないものではない。
参照:厚生労働省 大阪労働局─退職・解雇・雇止め(Q&A)より
つまり、労働者が雇用主(会社)に「退職したい」と伝えると、拒否することはできないのです。しかしこの2週間という期間は、原則会社の就業規則に従うケースが多いです。
ほとんどの企業では引継ぎ業務などの期間を設けるため、「自己都合による退職の際は退職する30日前に届け出ること」などの取り決めが記載されています。
退職日までの2週間出社をしたくないという方が、有給が無い状態で会社を休むと欠勤扱いになります。欠勤扱いになると当月のお給料から欠勤の日数分の給与が差し引かれるので注意が必要です。
「弁護士」や「労働組合」運営の退職代行を選ぶ
どんな退職代行サービスでも会社に有給消化の交渉ができる訳ではありません。
退職代行サービスには、会社との交渉ができる会社とできない会社があります。有給消化の交渉を行ってほしいなら、「弁護士」または「労働組合」が運営している退職代行サービスを選びましょう。その理由については次の章で詳しくご説明します。
会社との交渉で弁護士法に触れるケースも
退職代行サービスの利用を検討している方は、「自分では言いずらいし、退職代行が有給取得を交渉してくれるならお願いしたい」と考えている方が多いのではないでしょうか。
会社に交渉を行う行為は“非弁行為”という法律に触れる可能性があるため、退職代行サービスに有給消化の交渉を依頼するなら、「弁護士」または「労働組合」が運営している退職代行サービスをおすすめします。
弁護士でない者が、報酬を得る目的で、弁護士にのみ認められている行為をすることをいいます。弁護士法72条によって、報酬を得る目的で弁護士にのみ認められている行為(法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすること)が禁じられています。この法律に違反した行為が「非弁行為」となります。
引用元:チューリッヒ保険─非弁行為とは
弁護士ではない退職代行サービスの職員が、利益(報酬)を得る目的で交渉を行うことは“違法”になるためです。「退職代行サービスならどこでも同じ」ではなく、非弁行為になるため有給消化の交渉が行ってくれない企業もあるので注意が必要です。
「弁護士」または「労働組合」が運営している退職代行サービスをおすすめしたいとお話しましたが、「弁護士ではないのに労働組合はOKなのか?」という疑問が湧きますよね。労働組合の退職代行サービスに依頼すると、依頼者が退職代行が運営する労働組合に加入することで団体交渉権が手に入るため、交渉が可能になります。
民間企業の退職代行サービスの基本的な任務は「退職の意思」を会社に伝えること。有給の消化などで会社に取得の交渉を持ち掛ける場合は、「弁護士」や「労働組合」が運営する退職代行サービスを選びましょう。
自分の残有給日数を確認しよう
有給は労働基準法第39条により、業種や業態・雇用形態に関わらず、勤務日数や勤続年数に応じて付与日数が定められています。付与される有給の確認方法は次の通りなので、退職前に自分の有給残日数を確認しておきましょう。
【一覧表】有給付与日数
勤続年数(年) | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
年次有給休暇の付与条件は、雇入れの日から6ヶ月間継続して勤務しており、8割以上の出勤を行っている労働者に対して与えられます。アルバイト・パートなどの短時間労働者の有給については厚生労働省のページをご確認ください。
出勤率=「出勤日÷全労働日(その期間の所定労働日数)×100」
有給なしでも退職代行は使える?
有給を使ってしまって残数がない方や、有給がない方は辞めるまでどうすればいいのか?という疑問が湧きますよね。退職代行サービスの利用に有給の有無は関係ないので、有給を保有していない方でも退職代行サービスは利用できます。
有給の残日数がなく、出勤せずに退職をする場合には”欠勤”という扱いで会社に出社せずに退職となります。欠勤中は出社していないのでもちろん賃金は発生せず、固定給の場合は給与から欠勤分の賃金が引かれて支給されます。有給がなくても退職代行サービスは利用できるので安心ですね。
無断欠勤はNG!会社とのトラブルのリスクも
「会社に連絡するのも面倒だし、有給が無いから無断欠勤で辞めてしまおう」と思っている方は、会社とのトラブルになるリスクが高いので、無断欠勤でそのままフェードアウトして退職するのは避けましょう。
同僚や上司に迷惑をかけるだけでなく、会社の人が心配して安否確認のために自宅や実家に連絡を入れるケースや、自宅まで押しかけてくる可能性も考えられます。
さらに取引先のある営業職や締め切り期限の決まりがある企画職などの場合は、無断欠勤をすることで取引先の信頼を失ってしまうなどで会社に損害を与えてしまい、損害賠償を請求されてしまうこともあります。こういったトラブルを起こさないためにも、無断欠勤は社会人として避けるべき行為です。
有給取得は労働者の義務!違反で罰則あり
有給休暇の付与は「労働基準法」によって義務付けられているので、労働者には毎年勤続年数に合った有給休暇が付与されます。さらに労働基準法が改訂されたことにより、有給休暇を消化しなかった場合には企業に罰則が課せられます。
退職時の有休消化は拒否できない
退職時は退職日に合わせて好きなタイミングで有給を取得することができます。
「有給は労働基準法によって付与が義務付けられているなら、好きなタイミングで取得できるんじゃないの?」と思う方もいらっしゃいますよね。しかし実は、有給には“有給休暇請求に対する時季変更権”が設けられており、普段はどんなタイミングでも有給を好きに消化できるという訳ではありません。
労働者から取得申請があった有給取得希望日を、変更する権利のことを指します。
労働基準法の第39条第5項で「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と定められています。
繁忙期に有給取得者が多発してしまうと人手不足になって業務に支障が出てしまうため、変更を要請することができます。しかし退職時は季節を変えて有給を取得できないので、退職時に限っては「時季変更権」が適用されません。
つまり、会社は退職を希望する従業員が希望した有給日数を拒否することはできないのです。例えば、労働基準法では退職は2週間前の申告が必要と定められているので、14日前に退職の意思を伝えて有給を消化して辞めることが可能です。
退職代行に有給の消化を交渉してもらい、有給を消化することは難しいことではありませんが、会社としては従業員には引き継ぎを行って退職してもらいたいというのが一般的です。円満に退職するためには会社からの引継ぎの依頼に応えるのがよいでしょう。
有給取得の義務化、対象者は?
「働き方改革関連法案」の成立により、2019年4月1日から”有給が日付与されて1年以内に5日の有給を消化すること”が義務付けられました。有給は労働者に与えられた休暇なので、消化してから退職するのがオススメです。この義務化には対象になる人が限定されており、対象者についてお話ししていきます。
■対象者
所定労働日数:週5日または週30時間以上/勤続年数:6ヶ月以上
所定労働日数:週4日/勤続年数:3年半以上
所定労働日数:週3日/勤続年数:5年半以上
年10日以上の有給休暇保有者
年間の有給付与数が10日以上ある人が、有給取得が義務化されています。正社員やパートなどの雇用形態に関係なく、フルタイムで働く労働者が対象です。
フルタイムで6ヶ月以上働いており、80%以上の出勤実績があれば、有給が付与されてから1年以内に5日の有給を消化しなければなりません。
短時間労働でも長期雇用で適用
フルタイムで働く労働者以外では、1日数時間の短期労働者でも有給を消化を与えられた者のうち、長期雇用者に該当する労働者は有給取得の義務化の対象となります。
週に4日勤務している人の場合、入社してから3年6ヶ月以上継続して勤務しており、直近1年間の出勤率が80%以上あれば対象となります。週に3日勤務している場合、5年6ヶ月以上継続して勤務しており、かつ直近1年間の出勤率が80%以上あれば有給取得の義務化の対象です。
週に2日勤務している人は、6年6ヶ月以上勤務しても有給日の最大日数が7日となるため、有給取得の義務化の対象となりません。以下の表で有給付与数が10日を超えている労働者が対象となります。
6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月 | |
週4日勤務(年間169~216日) | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
週3日週(年間121~168日) | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
週2日週(年間73~120日) | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
労働基準法違反で企業に30万円以下の罰金
労働基準法で定められた有給消化数をクリアできなければ、企業に対して対象となる従業員1人あたりにつき30万円以下の罰金が処せられます。これは1人あたりの罰金なので、有給が取得できていない従業員が50人いる場合には1,500万円の罰金となります。
退職代行サービスを利用しない場合にも、こういった情報を知っておくと有給取得の交渉がしやすくなります。
有給取得の交渉も可能!ご相談は「日労」まで!
最近では会社が認めてくれなかったり、上司との関係が良好でないためなかなか言い出せないことが原因で、有給の消化をできずに退職日を迎えてしまうという相談も多く寄せられています。
当組合が運営する退職代行ニチローでは、退職代行サービスの一環として、有給取得の交渉も行っています。退職に関するご相談は退職代行ニチローにお任せください!