ハラスメント

マタハラの定義とは|2つの種類と対策・法律を解説

マタハラの定義とは

マタハラとは「マタニティ・ハラスメント」の略で妊娠、出産、育児に関する内容で女性労働者が職場であういじめや嫌がらせといった行為のことを指します。内容としては、セクハラやパワハラに近いものもあり、近年ではそれら2つと並んで社会的に重要視されているハラスメントの1種でもあります。

法整備も進んでいる関係で、処罰を行うことが可能になったマタハラ。ハラスメントの対策義務はどの会社も義務付けられているため、明確な定義付けも進んでいます。

この記事ではそんなマタハラに関する定義から法律面の解説をしています。

現在、マタハラで悩んでいる方はぜひともご参考にしてください。

お仕事に関する
お悩みを抱えている方は
お気軽にご相談ください
労働組合へ相談無料/24時間受付
[ 24時間お電話受付 ] 丁寧に対応致します
今すぐ電話で相談
[ 迷ったら友達登録 ] お気軽にお話をお聞かせください
LINEで気軽に相談

マタハラとは? 定義を解説

マタハラとは、女性労働者に対して行われる、妊娠・出産を理由とした肉体的・精神的な嫌がらせのことを指します。妊娠・出産に対する理解不足や会社の人手不足などが、マタハラが起こる原因として考えられます。
マタハラには大きく分けて2つの種類があります。1つは妊娠・出産を理由に解雇や降格などを行う不利益取扱型。もう1つは産休や育休の取得を拒んだり、「会社を休むことでほかの社員に迷惑がかかる」などと精神的に圧力をかけたりする嫌がらせ型です。
このようにマタハラとは、妊娠・出産に関する女性労働者への嫌がらせ全般のことを指します。

不利益取扱型

事業主が女性労働者に対し、妊娠や出産、産休や育休取得などを理由に、解雇や降格、減給などを行うマタハラです。これは男女雇用機会均等法の第9条で禁止されています。詳しくは「マタハラの違法性」の項目で後述します。
このように不利益取扱型のマタハラは、事業主から妊娠・出産に関わる理由で解雇や降格、減給などを不当に言い渡されることにより、女性労働者が不利益を被ってしまうことを指します。

制度などを利用した嫌がらせ型

妊娠・出産を理由に担当する業務内容を変更する、産休や育休を取得させない、といった制度を利用したマタハラです。上述した不利益取扱型と共通する部分もあります。
このように女性労働者が妊娠・出産に関する制度を利用しづらい状況を作ることは、労働基準法第65条第1項と第2項で禁止されています。 

“(産前産後)
第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
2 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。”

引用元:労働基準法

状態への嫌がらせ型

解雇などの不利益な取扱いはしないまでも、女性労働者に対して嫌がらせを行うマタハラです。妊娠・出産・育児に理解がなく、仕事を長期間休まれることを良く思わない人による、精神的・肉体的な嫌がらせを指します。
不利益取扱型以外の嫌がらせがこれに該当します。

マタハラの具体例

マタハラの具体例としては、産休や育休を取得させない、解雇や降格、減給を行う、妊娠自体を否定するような発言をする、いったことが挙げられます。いずれも女性労働者が妊娠・出産したことにより、会社やほかの社員に迷惑がかかることを恐れてのものだと考えられます。
なお、これらはすべて法律に違反する内容です。マタハラに関する法律については「マタハラの違法性」の項目で詳述しています。

休暇を取らせない

妊娠・出産した女性に対し「仕事が忙しくなる」「ほかの社員に迷惑がかかる」といった理由で、理解のない上司や会社が産休や育休の取得を認めないケースです。なかには産休や育休が制度として存在していない会社もあります。

解雇・契約更新してくれない

妊娠や出産を理由に、解雇、もしくは契約更新をさせない実質的な解雇をするケースもあります。仕事を長期間休まれるのが困るうえ、復帰後も思うように仕事ができなくなることを会社が恐れているためです。復帰後は子どもの急な体調不良で休まなければならなくなったり、以前のように仕事ができなくなったりする可能性があるという理由から、解雇されてしまいます。

降格・減給させられる

妊娠・出産を理由として降格や減給、仕事を減らされるケースです。妊娠中や復帰後は頻繁に休暇を取る可能性があり、ほかの社員に迷惑をかけるから、という理由で行われます。労働者側は生活がかかっているため、降格や減給を行うことは労働者にとって不利益な取扱いにあたります。

妊娠を理由とするいじめ

妊娠した女性労働者に対して「こんな忙しい時期に妊娠するなんてあり得ない」「仕事のことを考えて妊娠しろ」などと、いじめのような発言をするケースです。これは上述した「状態への嫌がらせ型」のマタハラにあたります。

マタハラの違法性

マタハラに関する法律はたくさんあり、マタハラは違法な行為とされます。
以下で解説する労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法では、主に産休・育休の取得時や妊娠・出産の際に、労働者に対して不当な扱いを行うことを禁止しています。そのため社会的立場の弱い労働者にとって有利な法律となっています。
言い換えると、マタハラの違法性は非常に高いと言えます。

労働基準法

労働者に対して不利益な取扱いを行うことは、労働基準法の第104条で禁止されています。
マタハラによる解雇や嫌がらせなどもこの不利益な取扱いに該当します。そもそもこの労働基準法では、マタハラによるものだけでなく、労働上発生したすベての不利益取扱いを禁止しています。

“(監督機関に対する申告)
第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。”

引用元:労働基準法

男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法では、マタハラに関する内容が定められています。同法第9条第3項では、女性労働者に対して妊娠・出産を理由に解雇や不利益な取扱いを行うことを禁止しています。前述した労働基準法と一部重複した内容になっていますが、男女雇用機会均等法は妊娠・出産という、女性労働者により重きを置いた内容になっています。

“(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
第九条 事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。”

引用元:男女雇用機会均等法

育児・介護休業法

近年増加してきた男性の育休にも対応できる法律です。女性のみならず、男性にも育休を積極的に取得させることを目的としています。
企業が義務化を求められている事項としては、育休に関する研修や相談窓口の設置、育休取得状況の公表(常時雇用の労働者数が1,000人以上の場合)などが挙げられます。

引用元:育児・介護休業法

マタハラに似たハラスメント

マタハラ同様、職場で起こる代表的なハラスメントに、セクハラ、パワハラ、パタハラがあります。
性的な嫌がらせを行うセクハラや、身体的・精神的に苦痛を与えるパワハラは、日本社会において長年問題視されてきました。
一方で、育休の取得などを理由として男性労働者に嫌がらせを行うパタハラは、男性の育児参加が進む近年になり登場してきました。

セクハラ

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、性的な言動による嫌がらせのことを指します。性的な言動を拒否されたことにより、解雇や減給など被害者にとって不利益な対応をとることもセクハラとみなされます。同様に、被害者が性的な言動を苦痛に感じ、仕事に集中できなくなる状態にさせることもセクハラにあたります。
セクハラの詳しい種類や対策については以下の記事で解説しています。

関連記事:セクハラの定義とは 4つの種類を解説

パワハラ

パワハラ(パワーハラスメント)とは、社会的立場の強い者が弱い者に対して行う言動や暴力のことを指します。厚生労働省は次の3つの事項でパワハラを定義しています。

1. 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
2. 業務の適正な範囲を超えて行われること
3. 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること

引用元:厚生労働省 雇用環境・均等局『パワーハラスメントの定義について』

具体的には、殴る蹴る、言動で侮辱する、無視する、無理難題な業務を押し付ける、仕事を与えない、個人情報を周知する、といった行為がパワハラに該当します。
詳細については以下の記事で解説しています。

関連記事:パワハラの定義とは|職場で問題視される6つの行為類型と対策を解説

パタハラ

パタハラとはパタニティ(父性)ハラスメントの略で、育休取得などを理由とした男性労働者への嫌がらせのことを指します。近年、共働きによる男性労働者の育児参加が増えたことにより、問題視されるようになってきました。
パタハラの具体例としては、上司が男性部下の育休取得や時短勤務を拒んだり、育休取得を理由に降格させたりすることなどが挙げられます。
令和2年度の厚生労働省の調査によると、過去5年間に育児に関わる制度を利用しようとした男性労働者のうち、パタハラを受けたと答えた人の割合は26.2%に上りました。この結果から、男性労働者の積極的な育児参加は依然として難しい状況にあると言えます。

参照資料:厚生労働省『令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)』

マタハラの相談先

マタハラを受けた際の相談先としては、会社の相談窓口や労働組合、弁護士などが挙げられます。
現在の職場に復帰したいと思っている人は、話がスムーズに進む会社の相談窓口で相談するのがおすすめです。一方で加害者や会社と対立し、復帰できなくなる恐れがある労働組合や弁護士に相談するのはあまりおすすめしません。
しかし逆に、加害者と交渉してほしい、悪質なマタハラ被害に遭ったため訴えたい、という場合は、労働組合や弁護士に相談すべきです。

会社の相談窓口

会社に相談窓口があるならそちらに相談しましょう。もしなければ親しい上司に相談するのがおすすめです。社外の人に相談するよりも、社内で相談するほうが話がスムーズに進み、味方も作れるため、自分にとって有利な状況になりやすいからです。
社内の相談窓口であれば問題が大きくなる前に上層部などにかけあい、加害者を遠ざけるといった対応を取ってくれる可能性もあります。

労働組合

合同労働組合に相談して、会社と交渉してもらうことも可能です。労働組合は団体交渉権を持っているため、労働者に代わって会社と交渉することができます。
労働組合は法的に強い立場にあるため話は通しやすいですが、会社と対立しやすく、その結果退職することになる可能性があります。損害賠償請求も含めて考えているのであれば、次項で解説する弁護士に相談することをおすすめします。
労働組合に相談するとしっかり対応してくれますが、加害者や会社と対立する恐れがあるため、復帰を望む場合はあまりおすすめしません。

弁護士

マタハラによって心身に重大な支障が現れた場合や悪質なマタハラを受けた場合は、弁護士への相談を検討しましょう。弁護士であれば損害賠償請求や法律の観点からの対応が可能です。
相談する際はマタハラを受けた証拠や、心身の不調がマタハラによるものであるという証拠など、具体的かつ客観的な証拠が必要になります。
そのため弁護士を雇うことは、加害者や会社を本気で訴えたい人にはおすすめです。しかし訴えれば、会社に戻ることはほぼ不可能と考えてよいでしょう。

まとめ

今回はマタハラの定義や具体例、違法性やマタハラ被害に遭ったときの相談先などを紹介しました。
少子化が進行している昨今において、マタハラは重大な労働問題です。子どもを産み、育てやすい社会にするために、事業者側は妊娠・出産・育児に関する知識や理解を深め、産休・育休が取得しやすい環境を整備する必要があります。労働者側もいざというときのために、マタハラの違法性や相談先を頭に入れておくとよいでしょう。
当組合でも労働に関するご相談を承っております。どうぞお気軽にご相談ください。

職場のお悩みはお気軽にご相談ください! 24時間受付中[年中無休]
LINEで気軽に相談 今すぐ電話で相談