職場のパワハラは、取引先からや同僚から、または部下からなど様々ありますが、厚生労働省の実態調査を見ると、上司からのパワハラが全体の67,9%で、圧倒的に多いです。 罵倒された、無理難題を押し付けられたなどの行為で、精神的にまいってしまう方もいます。 いったいどのような性格の上司だとパワハラに発展しやすいのでしょうか。 また、上司とどのような付き合い方をすればパワハラを回避できるのでしょうか。 この記事では、パワハラ上司の特徴とその対処法を紹介します。
パワハラ上司の6つの特徴
パワハラが発生する大きな要因として考えられるのが「上司の性格」です。上司の性格は、上司と部下の関係性や職場の雰囲気を左右してしまいます。人格を否定するかのごとく叱責する「精神的な攻撃」や、無理難題を押し付ける「過大な要求」といったパワハラは、上司が持つ身勝手な性格や責任感の無さによるものだと考えられます。
このように実際に起こるパワハラの例を挙げてみると、パワハラ上司の特徴が見えてきます。
頭ごなしに決めつける
頭ごなしに決めつける上司は、その威圧的な性格から立場の優位性を決定づけるパワハラを行いやすいと言えます。こういう上司は、ミスを特定の部下のせいだと決めつける、部下に事情を説明する機会を与えない、といった行為を平気で行います。このように「頭ごなしに決めつける」性格が、パワハラへと発展していきます。
身勝手な性格
もともと持っている身勝手な性格もパワハラにつながります。上司の身勝手に振り回された部下がパワハラと感じやすく、八つ当たりされた、イライラした態度で高圧的にものを言われた、といった例が見受けられます。
身勝手な性格は権力を行使して部下を押さえつけようという考えにつながり、そこからパワハラに発展すると考えられます。
無責任な振る舞い
上司であるにもかかわらず、無責任な言動や行動で部下を困らせることも、パワハラとみなされることがあります。責任の押し付けは、パワハラの6つの類型中「過大な要求」に該当する可能性があるためです。仕事を部下に丸投げしたり、責任を部下に押し付けたりといったことが挙げられます。
このように上司が責任感の無さから円滑な業務を阻害したり、特定の部下に過大な要求をしたりすれば、それはパワハラだとみなされます。
考えがコロコロ変わる
上司の考えがコロコロ変わることも、パワハラにつながると言えます。考えの変化に伴い指示がコロコロ変われば、職場のコミュニケーションや協調性、やる気などが乱れ、職場環境が悪くなってしまいます。指示が変われば着手していた仕事が最初からやり直しになるなど、部下は無理難題を押し付けられることになります。
このような環境が常態化すれば、それはパワハラと言っても過言ではありません。
根性論を押し付ける
無理な指示を出し、部下がそれを達成できないと「努力が足りない」と叱責する行為は、パワハラの6つの類型中「過大な要求」に該当します。部下の能力や実行可能性を見極めて仕事を振ることも上司の役割だからです。たとえば指示内容に無理があるにもかかわらず、それが達成できない部下に「やる気がないのか」などと叱責し、部下の人間性のせいにしようとします。このように「根性」などという部下が言い返せないことを引き合いに叱責する行為はパワハラに該当します。
口が悪い
普段から暴言や悪口を吐いている人は性格が攻撃的であり、パワハラを行う可能性があります。攻撃的で高慢な性格は仕事をするうえで隠せるものではなく、部下の指導にも滲み出てくるためです。「バカなのか」「こんなこともわからないのか」など、本人は思ったことを言っているだけのつもりですが、言われた側は侮辱されたと感じてしまいます。このように常に人を見下したようなものの言い方をする人は、もともと攻撃的な性格であり、パワハラを行いやすいと言えます。
パワハラ上司との付き合い方
もし上述したパワハラを行いそうな上司の下についてしまったら、問題が起きないよう自己防衛策をとることが重要です。対処法がわかっていればパワハラ被害にあうこともなく、気持ちよく働けます。たとえば上司の指示がコロコロ変わったとしても「さっきこう言ったじゃないですか」などと口答えするのは避けたほうが賢明です。上司の横暴を我慢し続けていると自分が辛くなるため、耐えるのではなく対処法を身につけましょう。そうすることで問題やストレスを最小限に抑えて仕事を続けられます。
丁寧な仕事を心がける
上から目線でものを言ったり、人のミスを高圧的に指摘することで威厳を示そうとしたりする上司には、付け入る隙を与えないようにすることが大事です。人を叱ることが好きな人は常に人の粗探しをしているため、自ら叱られるようなネタを提供してしまうことだけは避けたいところです。報連相をしっかり行う、時間を厳守するなど、当たり前のことを当たり前に行いましょう。叱る材料を自ら提供してしまうと相手の思うツボです。丁寧な仕事を心がけ、上司に付け入られないようにすることが大切です。
一人で頑張ろうとしない
一人で結果を出そうとして上手くいかなかった場合、全責任を押し付けられないよう、早い段階から上司を巻き込んでおくことが大切です。仕事のミスは上司にも責任があるため、上司が責任逃れできない状況を作っておきましょう。「この時点で上司に報告した」「この段階で上司に相談した」など、仕事の進捗状況を上司に報告したという記録を残しておくことをおすすめします。このように身勝手な上司が責任逃れできないようにする状況を普段から作っておくことで、いざというときに自分の身を守ることができます。
良好な人間関係を作っておく
日頃から周囲や同僚、他部署の人などと、良好な人間関係を作っておきましょう。これはパワハラ被害を相談するときに「人事に信じてもらえなかったらどうしよう」「周囲が味方になってくれなかったらどうしよう」と悩む人が多いためです。根性論を押し付けてくる上司は、ほかの部署から見ると「仕事熱心で部下の教育を頑張る良い上司」に映っている可能性もあります。パワハラ被害にあったときに助けてくれる人を一人でも増やすために、日頃から良好な人間関係を築いておきましょう。
コミュニケーションを増やす
普段から周囲とのコミュニケーションを増やすよう心がけ、上司とも上手く意思疎通を図れるよう努力しましょう。パワハラされることを恐れ、上司の言いなりになってばかりいるのは大きなストレスとなります。毎日の挨拶をしっかりする、上司に積極的にアドバイスを求める、といった簡単なコミュニケーションからとっていきましょう。日頃の何気ないコミュニケーションを増やすことで、上司との会話に慣れ、上司に怯えずに仕事ができるようになります。
パワハラに発展する前にできること
パワハラしそうな上司の下やパワハラに発展しそうな状況に置かれてしまったら、我慢せず早めに周囲に相談しましょう。我慢するのは精神的な負担になりますし、状況を見守っているうちに取り返しのつかないことになる可能性があります。「単に口が悪いだけでパワハラとは言えないかも…」「悪い人ではないのかも…」などと悩みながら様子見しているうちに、事態が深刻化することもあります。パワハラの可能性が少しでもあれば、周囲に相談したり、異動願いを出して上司と距離を置いたりするなどの対策をとりましょう。
周囲の人に知ってもらう
パワハラの可能性がある行為を受けたときは、その上司の存在を一人でも多くの人に認識してもらいましょう。パワハラ上司の存在を周囲も知ることで、誤魔化しようのない事実となります。こんなことを言われた、こんなことをされた、という事実や証拠をその都度周囲に提示し、明確化しましょう。普段の上司の言動を一人でも多くの人に知ってもらうことで、さらに上の人がその上司に注意してくれるかもしれません。パワハラを訴えたときに信じてもらえないという状況を回避できる可能性も高くなります。
異動願いを出す
パワハラとまでは言えなくとも、身勝手な上司に振り回されている、上司が仕事を全部押し付けてくる、ということがあれば、部署を異動するという選択肢もあります。人の性格はなかなか変わらないため、上司の横暴が改善されることは期待できないからです。パワハラのほとんどは「声が大きい」「口調が乱暴」「言うことがコロコロ変わる」というように、もともとの性格からくるものです。パワハラは確かに対処すべき問題ではありますが「上司が横暴な性格」というだけでは訴えられません。しかし同時に、そのような上司の下で我慢して働く必要もないため、人事に部署異動を相談してみましょう。
上司からパワハラを受けたときの対処法
パワハラを受けたときは我慢したり放置したりせず、早めに対処することが重要です。パワハラを放置しても解決することはなく、こちらが精神的にも身体的にも追い込まれ、心身を壊し働けなくなってしまう可能性もあります。周りの人や総合労働相談コーナー、労働組合、場合によっては弁護士や退職代行サービスなどに相談しましょう。早めに対処し、自分で自分の身を守ることが大切です。
周囲や人事に相談する
まずは周囲や人事に相談しましょう。会社は改正労働施策総合推進法第30条第2項に基づき、パワハラに対処する義務があります。周囲も日頃から相談していれば味方になってくれる可能性があります。パワハラは自分だけでは解決できない問題のため、周囲を巻き込むことが大切です。パワハラを受けたときの記録をつけておき人事に提出するなど、自分から積極的に動きましょう。このように周囲に相談することで上司が言い逃れできない状況や「相談した」という既成事実を作ることが、解決への近道となります。
公的機関に相談する
公的機関の相談窓口でも専門家に無料で相談できます。各都道府県の労働局や労働基準監督署内に設置されている総合労働相談コーナーでは、専門の相談員が法律に基づいたアドバイスをくれたり、パワハラ被害に対して実際に動いてくれる機関を紹介してくれたりします。このように公的機関はパワハラを解決するために行政が設置しているものであり、自分一人ではわからない解決方法を一緒に考えてくれます。
労働組合に相談する
自分一人で会社に改善を求めることが難しい場合は、団体交渉権のある労働組合に相談しましょう。パワハラや不当な扱いを受けても、労働組合に相談すれば団体交渉という形で会社に改善を要求できます。このように組織の力を使って有効に話し合いを進めるために、労働組合に相談するという方法もあります。
弁護士に相談する
社内での解決が難しく、転職も視野に入れているのであれば、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は公的機関にはできない損害賠償請求ができるため、自分が受けたパワハラに対して、上司や会社にしっかりと責任をとらせることができます。パワハラを受けた人のなかには心身を壊し、治療のために金銭的負担を負っている人もいます。そのため上司や会社にパワハラの責任をとらせたい、損害賠償請求をしたいと考えている人は、法律の専門家である弁護士に相談するのが賢明です。
退職代行サービスを利用する
パワハラをしてくる上司に直接退職を申し出るのが難しい人は、退職代行サービスを利用するのも1つの方法です。退職代行サービスを利用すれば、会社と一切やりとりすることなく退職できます。有給の消化や未払い賃金の精算なども退職代行サービスが会社と交渉を行い、適正に処理してくれます。パワハラを受けていると退職も認めてもらえないケースが多いため、退職代行サービスを利用して、精神的な負担を負うことなく退職するという方法も視野に入れておきましょう。弊組合も退職代行サービス「退職代行ニチロー」を運営しております。退職に関するお悩みがありましたら一人で悩まず、ぜひお気軽にご相談ください。
上司からのパワハラに苦しんでいる方へ
まずはパワハラ上司の特徴をしっかり押さえ「こういう性格の上司はパワハラに発展する可能性がある」と認識しましょう。そのうえで丁寧な仕事を心がけたり、コミュニケーションを増やしたりといった回避策をとり、自分の身を守ることが大切です。それでもパワハラにあってしまったときには一人で悩まず、人事や労働組合、弁護士など、然るべきところに相談しましょう。弊組合運営の退職代行ニチローでも、退職に関するご相談を24時間承っております。ぜひお気軽にご相談ください。