高収入や安定を求めて銀行に就職したものの「体育会系の人間関係が辛い」「ノルマがきつくて辞めたい」と悩んでいる人はいませんか? 銀行特有の古い企業体質に苦しめられ、辞めたくなってしまうのも無理はありません。しかし、ここまで築いてきたキャリアが途絶えたり、収入が下がったりすることを考えると、退職をためらう人もいるのではないでしょうか?
そこでこの記事では、銀行員が辞めたくなる理由やその対処法、辞めてよかったことや後悔したこと、退職に際したお金の不安の解消法や、おすすめの転職先などを紹介します。この記事を読み終わるころにはきっと、銀行を辞めて新たな一歩を踏み出す勇気が湧いてくるでしょう。

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銀行員を辞めたい5つの理由
銀行員が辞めたくなる主な理由は、体育会系の人間関係や、ノルマや勤務時間外での勉強、転勤や異動が多いというものです。銀行員はこうした銀行特有の古い企業体質に辛さを感じ、そこから逃れようと転職する人が多い傾向にあります。
体育会系の人間関係が辛い
銀行は体育会系の縦社会であり、多くの人がその人間関係の辛さから辞めたくなってしまいます。上司やお局様の言うことは絶対とされ、若手社員は理不尽な要求や扱いだけでなく、ときにパワハラを受けることもあります。出世競争も激しいため、上司や人事に気に入られようと取り繕わなければなりません。飲み会にも半強制的に出席させられます。このような銀行特有の人間関係の辛さに疲れてしまい、辞めたくなる銀行員が多くいます。
ノルマが厳しい
銀行員はノルマが多く、達成できなければ上司に厳しく叱責されます。もし月内にノルマを達成したとしても追加で課されるため、ノルマから逃れることはできません。投資信託や定期預金の獲得、保険商品やローン商品の販売、クレジットカードの契約など、それぞれでノルマが設定されており、それらを達成するために強引に売りつけることもあります。こうしたノルマの多さや厳しさに耐えかねて辞める人も少なくありません。
勤務時間外で仕事に関する勉強が必要
銀行員は取扱商品の知識をつけたり資格を取得したりするため、勤務時間外でも仕事に関する勉強が欠かせません。休日も取扱商品の勉強会への出席や資格取得の勉強で潰れてしまうこともあります。このように休日返上で仕事に関する勉強をしなければならず、プライベートの時間が少なくなることで辞めたいと感じる人もいます。
転勤や異動が多い
銀行員はほかの職業に比べ、転勤や異動が頻繁にあります。これは顧客との癒着や横領を防止するためです。一般的な銀行では平均2年で転勤になり、そのたびに家族と引っ越す、もしくは単身赴任する必要があります。内示があってから実際に転勤するまでの期間も1,2週間と非常に短期間であり、本人と家族に多大なストレスがかかるのは避けられません。こうした銀行特有の転勤の多さも、辞めたくなってしまう理由の1つです。
そもそも銀行員に向いていなかった
銀行員に憧れ入行したものの、いざ働いてみると自分には向いていないと感じて辞めたくなる人もいます。それは給料が高い、安定している、親のため、といった理由だけで銀行員を選んでしまったからです。そのため実際に入行してみると、給料は高いけれど激務、事務作業が多くてやりがいを感じられない、仕事に興味が持てないため、取扱商品や金融、資格の勉強が苦痛、といった悩みが出てきてしまいます。こうして想像していた華やかな世界と現実とのギャップに苦しみ、辞めたいと思う人も少なくありません。
銀行員を辞めたいときの対処法
銀行員を辞めたくなったときは、まず仕事量の調整や部署の異動を上司に願い出てみましょう。それが聞き入れられなかったり、改善されてもまだ辞めたいと感じる場合は、転職するのが最も手っ取り早い解決方法です。辛いときは早めに見切りをつけましょう。
仕事量を減らしてもらう
現在の仕事量を調整してもらえるかどうか、上司に相談してみましょう。担当業務が多過ぎると判断された場合は減らしてもらえる可能性があります。相談するときは、1日にどのような業務をどれくらいの時間行っているのかを、明確に伝えることが大切です。具体的な数値を用いて伝えることで、応じてもらえる可能性が高くなります。
部署を異動させてもらう
上司に部署の異動を願い出るのも1つの方法です。ほかの部署に異動すれば、人間関係や業務量などの悩みを解決できる可能性があるからです。ただし、そうして異動した場合、人間関係のトラブルがもとで異動してきたという印象を与えてしまいます。また自己都合での異動は、原則大きな店舗から小さな店舗への異動しか認められません。異動を願い出るときはその点に留意しましょう。
転職する
あなたの悩みを解決する最もおすすめの方法は転職することです。転職すれば銀行特有の古い企業体質から抜け出せます。銀行員としてのキャリアやスキルを活かし、同じ金融業界への転職や、可能であれば異業界への転職も検討してみましょう。転職するときは若いほうが有利になるため、辛いときは早めに見切りをつけるのも1つの方法です。銀行員におすすめの転職先や転職するときのポイントは後述します。
銀行員を辞めてよかったこと
銀行員を辞めると、銀行特有の体育会系の人間関係やノルマ、休日返上で勉強する日々から解放され、プライベートの時間やお金が生まれます。転職先によっては転勤や異動もなくなるため、家族にとっても大きなメリットがあります。
人間関係が改善した
銀行員を辞めることで、銀行特有の古い企業体質から抜け出せ、人間関係やパワハラから解放されます。銀行ほど体育会系の縦社会で、上司やお局様から理不尽な要求や扱いをされる業種は珍しいからです。銀行を辞めることで、この辛い人間関係から逃れることができます。
過酷なノルマやプレッシャーから解放された
銀行を辞めれば、過酷なノルマやプレッシャーから解放されます。銀行ほどノルマに異常なこだわりを持つ業種はないからです。ノルマを達成できなかった場合の上司からの叱責や、お金を扱う仕事ゆえの、ミスは絶対に許されないというプレッシャーに怯えることがなくなり、自分の納得できる業務を自分のペースで行えるようになります。
プライベートの時間を確保できるようになった
銀行員からほかの業界へ転職すると、休日出勤や接待ゴルフ、飲み会や歓送迎会などの回数が減るため、プライベートの時間を確保できるようになります。銀行員は資格取得の勉強や接待ゴルフで、休日が潰れてしまうことも少なくありません。銀行員を辞めれば、その時間を自分の時間や家族と過ごす時間にあてられるようになります。
ムダなお金を節約できた
銀行員を辞めるとそれまで頻繁にあった飲み会や接待ゴルフの回数が減るため、ムダなお金を節約できます。そうして浮いたお金を、同じく銀行を辞めることで生まれたプライベート時間を充実させるために使うことも可能です。銀行員を辞めることは、このようにお金の節約にもつながります。
転勤や異動の不安が少なくなった
転職先がほかの業界だった場合、転勤や異動の不安も軽減されます。銀行ほど転勤や異動が多い業種はありません。そのため銀行員やその家族は常に不安にさらされています。銀行員を辞めれば頻繁に引っ越す必要がなくなり、自分も家族も安心して生活できるようになります。
銀行員を辞めて後悔したこと
銀行員がほかの業界に転職すると、それまで享受していた給料や福利厚生、社会的信用度が下がってしまう場合が多いため、なかには後悔している人もいます。特にメガバンクで働いていた銀行員であれば、転職後はかなりの物足りなさを感じてしまいます。
給料が下がった
銀行員は激務な分給料が高く設定されているため、転職後に給料が下がってしまう可能性は否定できません。特にメガバンクから地方銀行やほかの業界に転職した場合、給料が3分の2になるケースもあります。そうなると生活の質も下がる可能性があるため、家族がいる人は転職について家族の理解を得ておくことが大切です。
福利厚生が悪くなった
銀行員からほかの業界へ転職すると、福利厚生は悪くなることがほとんどです。これは銀行員が忙しい分、福利厚生が手厚くなっているためです。住宅補助や家族手当、育休や資格取得費用の支援など、銀行員は福利厚生が大変充実しています。そのため特にメガバンククラスの福利厚生に慣れていると、転職後に物足りなさを感じることも少なくありません。
社会的信用度が下がった
安定した収入があり社会的に信用されている銀行員を辞めた場合、その社会的信用度が下がることは否めません。今までは簡単に通っていたローンやクレジットカードの審査に落ちたり、賃貸契約を断られたりするケースが出てきます。堅実な職業とされている銀行員を辞めると、このように社会的信用度は下がってしまいます。
銀行員を辞めたときの金銭的な不安を解消する方法
ここまで読み「転職したい気持ちが強くなってきたけれど、金銭的な不安があって辞められない…」という人も安心してください。銀行員は特に賞与や退職金の額が大きいため、しっかり受け取ってから退職すればそこまで心配することはありません。
もちろんベストなのは転職先が決まってから退職することですが、激務な銀行員の仕事と並行して転職活動を行うのが難しい場合もあります。その場合でもできる限り生活費を確保しておき、失業手当の申請や国民年金保険料の免除申請を忘れずに行えば、しばらくは転職活動に専念できます。
賞与の支給日と退職金規定を確認する
銀行員を辞めたいと思ったときは、まず賞与の支給日と退職金規定を確認しましょう。いずれもまとまったお金を受け取ることができ、確認するだけでも退職後の金銭的な不安が軽減されます。
賞与の支給日までもう少しという場合は、賞与を受け取ってから辞めるほうが賢明です。ただし、賞与額が決定される前に退職の意思表示をすると、減額されたり不支給になったりする恐れがあるため注意が必要です。
退職金規定は職場によって異なりますが、自己都合退職の場合でも、3年以上勤続していれば受け取れる企業が約半数となっています(※)。賞与と退職金はしっかりと受け取り、安心して転職活動を行えるようにしておきましょう。
※参照PDF:上記の7 退職金(5)退職一時金を受給するための最低勤続年数
参考記事:東京都産業労働局『中小企業の賃金・退職金事情(令和2年度版)』
失業手当を申請する
銀行員を辞めたら失業手当を申請し、最低限の生活費を工面しましょう。雇用保険制度における失業手当(正式名称:基本手当)は、次の2つの要件を満たした人がハローワークで申請できます。
失業手当の受給要件
1. 再就職に対する積極的な意思があること
2. 離職日以前の2年間に、被保険者期間(雇用保険に入っていた期間)が通算して12ヶ月以上あること
給付額は退職前の給料(賞与は除く)のおよそ50〜80%です(年齢区分ごとに上限あり)。給料が少なかった人ほどその率は高くなります。
給付期間は被保険者であった期間によって異なり、自己都合退職の場合は以下のように定められています(心身に障害のある就職困難者は除く)。つまり勤めていた期間が長いほど、長期に渡って失業手当を受給できます。
- 1年未満…0日
- 1年以上5年未満…90日
- 5年以上10年未満…90日
- 10年以上20年未満…120日
- 20年以上…150日
ただし、失業手当は退職後すぐに受け取れるわけではなく、受給まで約3ヶ月かかるため注意が必要です。詳しくは次項で説明します。
また、失業手当の給付中に再就職が決まった場合は給付がストップしますが、要件を満たせば就業促進手当を受給することができます。詳しくは厚生労働省の説明をご覧ください。
参照記事:厚生労働省 ハローワークインターネットサービス『基本手当について』
3ヶ月分の生活費を確保する
前述したように、失業手当を受給できるようになるまでは約3ヶ月かかるため、少なくとも3ヶ月分の生活費は確保しておかなければなりません。
失業手当受給までの期間の内訳
・申請に必要な書類が届くまでの約2週間
・申請後の待機期間の7日間
・給付制限期間(自己都合退職の場合)の2ヶ月間
ただし、この3ヶ月分の生活費というのは最低限の費用であり、できれば半年〜1年分準備しておくのが理想です。実際、転職活動が半年以上に渡ることもめずらしくありません。特に社会人経験が少ない20代前半までの若年層や、逆に長期雇用が望めない40代後半以降の人は、転職活動が長引く傾向にあります。生活費は計画的に準備しておきましょう。
年金の保険料の免除申請をする
失業者は国民年金保険料の支払いを免除してもらえる仕組みがあるため、必ず免除申請をしておきましょう。失業者は前年の所得をゼロとして審査されるため、保険料は全額免除になります。しかも、その期間中は、2分の1の額を納付した場合と同じ扱いになり、将来その分の老齢基礎年金を受け取れます。ただし、免除申請手続きを行わず、未納の状態であった場合は保障されません。
また、免除された保険料は10年以内であれば追納も可能で、追納した場合は全額納付したときと同じ額の老齢基礎年金を受け取れます。したがって、転職して金銭的に余裕が出てきたら追納することをおすすめします。
詳しくは日本年金機構のホームページやパンフレットでご確認ください。
銀行員におすすめの転職先は金融に関わる職場
銀行員の転職先としておすすめなのは、同じく金融に関わる職場です。地方銀行や経理職、保険の営業職などに転職すれば、銀行員時代に培ったスキルや資格を存分に生かして働けます。また、銀行員の真面目さと正確さを生かし、社会人採用枠で公務員に転職するという選択肢もあります。
地方銀行
メガバンクからの転職先としておすすめなのが地方銀行です。規模がメガバンクと比べて小さい分、地域密着型で顧客と密にコミュニケーションをとれ、それが仕事をするうえでのやりがいになるからです。地元での知名度は抜群で地域顧客からの信頼が厚く、地元の主要企業や自治体のメインバンクとして高いシェアを誇っています。
そのため、地域顧客とのコミュニケーションを重視したい人におすすめです。
経理職
ノルマがなくデスクワーク中心の経理職は、銀行員時代の経験を生かしつつ、自分のペースで仕事ができるためおすすめです。銀行員より年収は下がりますが、その代わりノルマや営業成績に関して上司から叱責されることは一切ありません。
したがって、銀行での激務に疲れ、マイペースに仕事をしたい人に向いています。
保険の営業職
保険の営業職も銀行員の転職先として人気があります。それは銀行員時代に取得した資格をほぼそのまま仕事に生かせるからです。営業成績に応じたインセンティブの割合が多いため、高収入も期待できます。
このように保険の営業職は、銀行での経験や取得資格をそのまま生かして働きたい、銀行員並みの収入が欲しい、という人におすすめです。
公務員
社会人採用枠を利用して地方公務員に転職することもできます。銀行員と同様安定した仕事であり、社会的信用度も高いためおすすめです。社会人採用枠は令和元年度時点で、全都道府県政令指定都市の80%以上で導入されています。近年では受験可能年齢を59歳に引き上げる自治体が増えており、年齢制限がない公務員試験と言っても過言ではありません。
真面目さや正確さを持つ銀行員におすすめの転職先です。
参考記事:公務員総合試験ガイド『社会人経験者(地方公務員)』
銀行員が転職するときのポイント
転職する際はまず、キャリアやスキル、希望の条件などを明確にします。そして、銀行の1番の繁忙期である3月と9月に転職時期が被らないよう、逆算して転職活動のスケジュールを立てましょう。転職活動を効率良く進めたいときは転職エージェントを、辞める際に銀行から理不尽な要求をされたときは退職代行を利用することも検討しましょう。
キャリアやスキルを整理する
転職活動をスムーズに進めるため、まずは自分が今までにどのような業務を行ってきて、どのようなスキルを持っているのか整理しておきましょう。たとえば、金融や財務に関する知識や実績、営業力や遂行力、コミュニケーション能力や仕事の正確さ、取得した資格などです。特に金融や財務に関する専門的な知識やスキルを持っていると、年収や待遇などを落とさずに転職できる可能性が高くなります。
転職先が同じ金融業界の場合でも異業界の場合でも、銀行員が持つこれらのキャリアやスキルは大変重宝されます。
希望の条件を明確にする
次に転職後のミスマッチを防ぐため、転職先に希望する条件を明確にしておきましょう。仕事内容や就業時間、給料や勤務地、福利厚生など、それぞれに優先順位をつけ、どれが最優先でどれなら妥協できるのかを把握します。
このように希望する条件や優先順位を明確にしてから転職活動を行うことで、転職後のミスマッチを防げます。
3月と9月は避ける
転職する時期が期末である3月と9月になるのは避けましょう。3月と9月は銀行の1番の繁忙期にあたり、そのような時期に転職していなくなってしまっては職場に迷惑をかけてしまいます。おすすめなのは、転職したい時期の2,3ヶ月前から転職活動を始めることです。転職する時期から逆算してスケジュールを立て、繁忙期に辞めることはできるだけ避けましょう。
転職エージェントを利用する
自分1人で転職活動をするのが難しいと感じる場合や、転職活動を効率良く進めたい場合は、転職エージェントを利用しましょう。各業界に精通したキャリアアドバイザーが、あなたの希望する条件や今までのキャリア・スキルに合った転職先を厳選して紹介してくれます。転職エージェントは、一般には公開されていない好条件の非公開求人情報も多数持っているため、上手く利用できれば転職活動が成功する可能性が高まります。
場合によっては退職代行も利用する
退職を言い出しづらい場合は、退職代行を利用するという選択肢も検討しましょう。銀行の古い企業体質から「ノルマを達成してから辞めろ」「有給消化は認めない」などと、理不尽な要求をされることがあるためです。
こうしたときに退職代行に依頼すれば、先方とのやりとりや退職に関わる手続きを代行してくれます。
当組合が運営する退職代行ニチローは、退職の連絡を始め、退職日の調整や有給取得交渉まで代行します。24時間年中無休で相談を承っていますので、どうぞお気軽にお声がけください。
まとめ
この記事では、銀行員を辞めたい理由やその対処法、辞めてよかったことや後悔したこと、金銭的な不安の解消法やおすすめの転職先、転職する際のポイントを紹介しました。
銀行員は他の方からすると敬られる職業ではありますが、その実態はどの仕事とも変わりはありません。無理に続けるのも心身ともに良くはありません。